stoicのポケモンGBAメモ帳(二)

ポケモン第二世代、第三世代について主に考察するブログ。

超長期戦狙いの戦術と対戦ゲームにおける「正解」について

最近だいぶご無沙汰している金銀で、分身悪あがき戦術が数年ぶりに考察されていたようだ。
まあ好みが分かれる戦術だと思うのだが、これについて単純な性能とは別の観点から、以前から思っていたことをまとめてみた。
これを書こうと思ったのは、剣盾のランクバトルでそこそこシビアな総合時間制が導入され、TODに関する議論や環境(戦術の強弱関係)の変化が議論された、というのもある。
分身や受けループなどをはじめとした長期戦狙いの戦術、その他、巷に溢れている「好みが分かれる」戦術*1とどう付き合うのかの参考になるかもしれない。

分身悪あがき戦術とはどんなものか

ポケモン金銀において
ケンタロス@残飯 鈍い・身代わり・影分身・眠る
のような型が存在する。
攻撃技が無く一見意味不明な型だが、PPが切れるまで相手に攻撃せずにひたすら粘り(このケンタロスを「滅びの歌」などを絡めずにタイマンで倒しきれるポケモンは非常に限られる)、攻撃6積みした悪あがきでPP的に疲弊した相手を倒すことができる。
通常こうした戦術は攻撃範囲、積み技、回復技で技スペースのトレードオフが発生し、どれかを削らざるを得なくて安定性が落ちる欠点があるが、この点を悪あがきを攻撃技に見立てることによって強引に解決した割と革命的な戦術である。*2

こうした超長期戦狙いの戦術を考える際、
「試合中にミラーが発生した場合にどうするか?」
という問題が発生する。

これは実際分身悪あがき戦術に限ったことではなく、金銀だと例えば
ツボツボ@残飯 丸くなる・どくどく・眠る・寝言・砂嵐*3
のような型でミラーになってしまった場合も問題になる。

要は、回避率なり純粋な耐久なりで非常に硬いポケモンが残飯を持って悪あがき合戦になった際、被ダメ(+反動)の期待値が残飯回復を超えないとき、試合の決着は非常に困難になってしまうのである。

実際どのくらい時間がかかるのか

せっかくなので雑に計算してみる。
上記のケンタロスがミラーしても、膨大なターン数をかけると、「連続命中や連続急所で相手を倒せる」のような上振れは起きうる。
例えば残飯ケンタロスミラーの「わるあがき」で相手を倒すには7~9発かかる。*4
間をとって8発当てればいいと考えると、8回攻撃して全部当たる確率は0.014%程度。
すなわち期待値的には、とても雑に考えると8ターンセットを一万回試行程度=ざっくり10万ターンとかその程度の桁で時間をかければ決着がつく。*5
計算が雑すぎてプラマイ数桁の誤差がありそうだが、個人的には、何兆ターンとか続くと思っていたので(←厨二病)、案外簡単に決着つくな、と思った。*6

裏を返すと、「とんでもない時間をかければ、「攻撃性能の低い残飯持ち」のミラーマッチが発生しても、大抵の場合決着をつけることは可能」である。

というわけで、次は実際そんなことをするのは可能か、あるいは、それを目指すべきなのか?といったところを考えてみよう。

ターン制限がある場合

レート戦等では、多くの場合持ち時間制があり、実際には高々20~30ターン程度で試合は終わる。
ジム城の大会では基本的に80ターン制限が敷かれている。
このように有限ターン数で一つの対戦が終わる仕様があると、超長期戦に陥ったプレイヤーは、とにかく粛々と対戦を進めて判定を待てば、数十ターン程度(=高々1時間程度)で試合は終わる。

数試合単位での時間制限がある場合

オフ会などでは、仮にゲームシステムの仕様上ターン・時間制限が無かったとしても、予選で
「未消化試合が発生した人は残りは全敗扱いとする」
などのハウスルールが敷かれることが多く、事実上の時間制限が存在する。
この場合、自身の利得を勘定して降参/降参を促すなど交渉したりジャッジを呼ぶ/対戦を続行/そもそもそういった型を選択しない・・・などの選択を採ることができる。
数試合行って予選通過を目指すという目的の違いがあるため、最適な行動はターン制限がある場合とは変わってくるが、いずれにせよ目的設定は基本的に単一(かつ、全プレイヤーで共通)のため話はさほど難しくない。

ところで、第五世代のレート戦においてTOD戦術が台頭した際、響さんがこんなことを話していた。
TOD戦術に当たってしまい負け確状態に陥ったとしても、降参をせず、時間切れ判定負けになるまで試合を続けた方が「強い」行動である。なぜなら、自分が相手をしている限りは、そのTOD戦術の使用者は次の試合に移ることができず、したがって単位時間当たりの勝ち数が少なくなる=TOD戦術を弱体化させることができるからである」
これを読んでなるほどと思った記憶がある。
レート戦の場合は、特定のロムのレートを上げることが共通目的である。レート戦は基本的に期限付きであり、高勝率であれば、試合数が多いほど高レートになるので、この目的は「ある限られた時間のなかでできるだけ多く勝利する」と言い換えることができるのだ。
この目標設定はオフ会の予選(予選の時間内で試合を消化し、なるべく多く勝つ)とよく似ている。

時間制限もターン制限もない場合

では、時間もターン数も制約が無い状況ではどのように行動するのが「正解」なのだろうか?
先述したレート戦やオフ会の予選などとは異なり、野試合(フレ戦)には1試合の勝敗を超越した明確な共通目的が存在しない。
こんな場合はどうしたらいいのだろうか。
「その試合における勝利」を狙いに行くのであれば、どんなにターン数がかかろうとも断固として試合を続けるのが正解となる。
もう少し現実的な勝利を追求すると「相手が根負けして降参するのを待つ」ということができる。
しかし、これにより人間関係が害されるリスクなんかを重く見て試合の中断を提案したり、自ら降参を提案することもあるだろう。

あくまで勝つことを重視して何万ターンも待つのか?
お互いの人間関係を尊重して自身の降参を提案するのか?
勝率計算を行って自分のほうが有利であることを示し、相手に降参を促す(もちろん、応じてくれるとは限らない)?
どんなやり方が「正解である」と言えるのだろうか?

「その試合における勝利をあくまで狙う」というのが、試合を超越した目的(例えば、「対戦ゲームをやって楽しむ」とか、「何試合もやってパーティの考察を深める」とか)に見合わないと判断された場合には試合は中断される可能性が高い。
この「やめ時」というのは当然ながらプレイヤー間では試合を超越した目的設定が共有されているわけではないため、食い違うことも多いだろう。
考え始めると恐らく「正解行動」は存在しない。*7*8
少なくとも自分の中で納得のいく方針(試合を超越した目的)を持っておくと良いかもしれない。

余談:僕個人のやり方

こういうことを考えたりして、最終的には↑のような面倒な状況を回避することを目的とし、僕自身は現在「対戦の際にはターン数制限(に準ずるもの)を必ずつける、またつけた状況下での対戦を考察する」という方針にしている。

*1:例えば、素催眠、裸威張るのような運ゲーだとか、バグっぽい挙動を使った戦法とか

*2:なお第四世代から、悪あがきの反動ダメージは「自分の最大HPの1/4」となったため、こうした「自身の悪あがきを攻撃手段とする」という戦術は非常に成立しにくくなった。第三世代だと少し趣旨は違うもののレジスチル@残飯・鉄壁・度忘れ・影分身・眠るのような攻撃技無し戦術がたまに話題になったり、カビゴンサマヨールで非常手段としてカビゴンが悪あがき狙いに入ったりすることがある。

*3:公開した後、毒だと簡単に決着がつくことに気付いた。結果として例示するにしてはあまりにも実用性が無い型になってしまったがまあ勘弁してほしい。他だと攻撃最低値の55スイクン@残飯ミラーなどで、悪あがきの通常ダメージが残飯回復を超えない事態が生じたりする。

*4:ジム城の場合、ノーマルタイプの悪あがきにはタイプ一致補正がかかる。実機だと必要攻撃回数はもっと多い。

*5:この項はあくまでざっくりとした話なので、反動とか7連急所&外し&2連急所、みたいなのは考慮しない。

*6:ちなみに、上記のツボツボのミラーの場合、もしお互いが攻撃を最低値まで下げていたとすると、悪あがきの急所ダメージが3~4となり、残飯回復7を絶対に超えないため、文字通り永遠に決着がつかない状態となる。 ツボツボが攻撃を最大値まで上げていた場合でも、悪あがき急所のダメージが8~10/126なので、間を取って9ダメージが出る(出るのかは知らん)として、59回連続での急所という文字通り天文学的な数字となる。 「混乱自傷ダメージを軽減する」目的で耐久ないし特殊ポケモンの攻撃を最低値に設定することはよくあるが、こうしたケースを想定すると攻撃を下げないのが最善なこともあるのかもしれない。

*7:""潔く降参をする""という一見丸い立ち回りですら、「いやまだそっちに勝ち筋あるじゃん」「せっかく勝ちパターン入ったのに即降参かよ」と顰蹙を買うリスクはある

*8:仮に「人間関係を重視する」というのであれば、なぜ嫌われるリスクの比較的高い運ゲー戦術や超長期戦前提の戦術を採用したのか?という話にもなってくる